マンション建替えの実務

マンションの建替えは、世代や価値観、経済状況が異なる区分所有者をうまくまとめていかなければならないという、大変困難なプロジェクトとなります。それでなくても、自己の利益が最優先されがちなため、入念な準備と計画的な推進が必要です。
最も重要なポイントは、初期の検討段階から事業実施の段階に至る全てのプロセスにわたって、居住者等の合意形成を適切に図っていくことです。

建替えか修繕かの判断

マンションの老朽化や設備陳腐化を踏まえ、区分所有者が望む居住環境を実現するには、建替えか修繕のどちらがよいか、費用対効果に基づき判断することになります。

1) マンションの老朽度判定、ニーズ等の把握と要求する改善水準の設定
2) 修繕・改修の改善効果の把握と費用の算定
3) 建替えの改善効果の把握と費用の算定
4) 費用対効果に基づく建替えか修繕・改修かの判断

建替えの合意形成

マンションの建替えを成功するためには、区分所有者が主体となって、建替え計画に対する合意を適切な手順で形成していくことが最も重要です。

1) 準備段階 区分所有者の有志が集まり、建替え提起のための基礎的な検討を行います。
2) 検討段階 管理組合として、修繕との比較を含めた建替えの必要性や、建替えの構想についての検討を行います。
3) 計画段階 区分所有者の合意形成を図りながら、建替え計画の策定を行います。

『区分所有法』の建替え決議

区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数により、建替えを決議することができます。その決議集会には、招集通知を2ヶ月前までに発しなければならず(通常は1週間前)、区分所有者に十分な考慮期間を与えることが必要となります。
決議においては以下の事項を定める必要があります。

1) 新たに建築する建物の設計概要
2) 建物の取壊しおよび再建建物に要する費用の概算額
3) 費用の分担に関する事項
4) 再建建物の区分所有権に帰属に関する事項

招集通知には、議案要領のほか、以下の事項も通知しなければなりません。

1) 建替えを必要とする理由
2) 建替えをしない場合の維持回復費用の内訳
3) 建物の修繕計画内容
4) 修繕積立金会計の積立額

また、建替え決議集会を招集した者は、説明会を開催する義務が発生します。これは、書面による交付だけでは、区分所有者が十分に内容を理解できないからです。説明会は、建替えを決議の1ヶ月前までに開催しなければなりません。

マンション建替組合の設立

建替え決議が成立すると、『マンション建替組合』という法人格のある組合が設立できます。個人施行者による建替えも可能ですが、法人格があることで、建替え資金の借り入れや各種契約行為の履行を安定化させることができるというメリットがあります。
設立には、以下のような要件が課されます。

1) 建替え合意者の中から5人以上の設立発起人
2) 建替え合意者の4分の3以上の同意を得る
3) 都道府県知事の認可を受ける

建替組合は、建替えに合意した区分所有者がその構成員になり、また建設や販売を行うデベロッパーが参加することもできます。
建替組合は、理事3人以上、監事2人以上を総会で選任し、理事の互選により理事長を決めます。ここら辺は、管理組合と同じ仕組みですね。理事・監事の任期は3年以内です。
また、知識を有し、公正な判断のできる審査委員を3人以上選任します。

権利変換手続

1) 組合員の議決権の5分の4以上の同意
2) 組合員以外の関係権利者(抵当権者、賃借人)の同意
3) 審査委員の過半数の同意
4) 都道府県知事の認可

建替え工事の実施

建替え事業の施工者は、権利変換期日後、明け渡しの期日を定めることになります。区分所有者や賃借人は、その期日までに引越しを完了しなくてはなりません。
建替えに賛成しない区分所有者には、権利を時価で買い取り(売り渡し請求)、立ち退いてもらいます。引き続き賃借を希望しない借家人には、補償金の支払いに代えて転出しもらいます。